真山知幸ジャーナル

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26歳で県知事になった伊藤博文(書評『努力したぶんだけ魔法のように成果が出る英語勉強法』清涼院流水)

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26歳の若さで、兵庫県知事に

就任した人物をご存知だろうか?

先日、都構想が否決されて、

政界引退を表明した橋下徹が、

大阪府知事に就任したのが38歳。

当時、現職最年少の知事となったが、

この人物が知事になったのは、

それよりもさらに10年以上も若い。

そんな人物はいないはずだと思う人もいるかもしれない。

確かに北海道知事の田中敏文氏が

35歳5ヵ月で当選したのが、

最年少知事として知られている。

だが、それはあくまでも

「最年少就任公選知事」の話である。

公選される前は、国から派遣された

官選の知事が就任していた。

明治維新後、26歳の若さで、

初代の兵庫県知事となったのは、

後に初代総理大臣となる伊藤博文だ。

彼が26歳という若さにもかかわらず、

抜擢されたのには理由がある。

神戸港で外国人と交渉し、外交上の判断を

行えるだけの語学力を持っていたのが、

伊藤くらいだったからだ。

しかし、伊藤はそのつい6年前くらいは、

英語どころか攘夷思想によって

外国人を打ち払うことこそ理想だと考えていた。

それが、盟友の井上馨の勧められて、

一緒にロンドン留学を行ったことで価値観は一転。

帰国後、伊藤は井上とともに、決死の覚悟で

長州藩藩主に攘夷がいかに無謀であることを

伝えにいくことになる。

伊藤がもしロンドン留学を行っていなければ、

知事に就任することもなく、最年少で

内閣総理大臣になることもなかった可能性が高い。

彼の人生はもちろん、日本の行く末も

大きく変わっていたことだろう。

ちょうどそんな伊藤についての原稿を書きながら、

「語学力」がもたらす影響の大きさを

実感していたタイミングだっただけに、

流水さんの新刊を面白く読ませてもらった。

努力したぶんだけ魔法のように成果が出る英語勉強法

「魔法のように成果が出る」と謳われると、

つい身構えてしまう人もいるだろう。

奇妙キテレツで、かなり実践する人間を選ぶような

類の英語勉強法ではないか、と。

しかし、そんな杞憂は無用であることに

読み始めればすぐに気づくだろう。

珍しいことは何も書いていない、

基本も基本、ごく当然のことが書いてある。

しかし、これを実践している人は、

どれほどいるかといえば、かなり少ないのではないか。

例えば、英語を話したければ、

話す練習をしなければならない。

当たり前のことだ。

だが、CDでリスニングに励み、

文法をせっせと勉強しては「話せない」と

悩んでいるケースが少なくない。

それも無駄ではないだろうが、

話したければ、話す練習をまずすべきである。

「私は英語を話すのが苦手で、と思われている方には、

今までどのくらいスピーキングの訓練をされてきたのか、

自問してみてください」

そう勧める本書では、

「英語で脳内描写」など、

一人で明日からすぐできる方法が

紹介されているので、やってみるとよいだろう。

そもそも、

英語のスピーキングは何か

お金や時間をかけなければ伸びないものだという

先入観が強いように思う。

「英語を話したい=英語留学」と

考える人も少なくないし

(「語学留学」は内定が決まらない

大学生のメジャーな逃げ道である)、

そこまでしなくても、

英会話教室に通うことをまず考えがちだ。

だが、本書でも書かれているように、

ネイティブと話せば話すほど、

英語力がみるみる向上するというわけではない。

学校のクラスで外国からの

留学生を受け入れたことがあれば

思い出してもらえれば分かるだろう。

そう、

「ネイティブは相手のレベルに合わせて話す」

のである。

これは、自分が日本語を勉強している

外国人を相手にどんな会話をするか、

想像してみても、同じはずだ。

容赦なく、友達と同じような

日本語で会話するような非情さは

普通は見せないはずだ。

伊藤博文が英語力を伸ばせたのは、

武器購入にあたって外国商人と駆け引きをしたり、

お互いが本気になる外交交渉の場での

経験を積んだからにほからならない。

そんな真剣勝負における場面でも

揺るがない英語力を身につけるには

どうすればいいのか。

本書では、よくある誤解を解きながら、

具体的な方法が数多く示されているので、

今度こそ英語を身に付けたい人には

勧めたい1冊である。

【追記】

ちなみに、私は語呂合わせが大好きで

よく英単語を覚えていた。

邪道とみなされるので、

これまであまり言えずにいただけに、

本書では、語呂合わせの効用も書かれており、

なんだかうれしくなってしまった。

私が使っていたのは以下の本である。

いやあ、懐かしい・・・。

くだらないんだけど、頭に残るんだよなあ。

英単語連想記憶術〈第1集〉―心理学が立証した必須4000語の獲得 (青春新書)