真山知幸ジャーナル

告知、執筆活動の記録のほか、書評、名言、偉人についてなど

『この世の全部を敵に回して 』(白石 一文)

この世の全部を敵に回して (小学館文庫)

語り手の友人であるK***氏の手記がひたすら続く本作。

ストーリーは進まず、K***氏の人生観がつまびらかになっていく。

哲学書のようで、小説の自由さを改めて思い知った。

私は子供たちのことも妻のことも愛してはいない――。

世界を突き放しす氏の人間への冷淡な考えには、拒否反応を覚えざるを得ない。

それでも妙な説得力を持っており、最後まで読み進めてしまった。

そして、最後まで読んでよかった、と

思わせてくれる作品でもある。

畳み掛けるラストが読み応えあり。