真山知幸ジャーナル

告知、執筆活動の記録のほか、書評、名言、偉人についてなど

倍返しできない人のための『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)

原作ファンとしては「半沢直樹」のヒットは嬉しい限り。ドラマしか観てない人は、ぜひ2作とも読んでほしいなあ。ドラマに負けないくらいスッとします。今は再び読み返しているんだけど、もはやドラマのキャスティング通りの顔しか思い浮かばない。ミッチー演じる渡真利忍は、いい味出してたなあ。

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

オレたち花のバブル組 (文春文庫)

しかし、なかなか半沢直樹のように自分に正直に生きるのは難しいところ。実際は押しの強い人間にいいように言いくるめられたり、上司に押さえ込まれることも少なくないだろう。だからこそ、半沢のドラマがヒットしたのだろうけど、現実に即した主人公が活躍するのが、同じ作者の『ようこそ、わが家』へ。

ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

倉田太一はまじめだけがとりえの会社員。無難に生きることを第一としていたが、ある朝、突発的に駅のホームで割り込んできた人に注意した。彼のなかの「半沢直樹」的な要素が瞬時に爆発したわけだが、そのせいで、自分の家に嫌がらせが相次ぎ大変なことになってしまう。同時に、出向先の職場でも、アクの強い営業部長の不正に気づいてしまい、勝気な女性部下とともに、戦うことに……。

半沢とは違い、倍返しどころか、やられっぱなしの倉田。くじけそうになりながらも、ギリギリのところでファイティングポーズを保つ姿には「自分もやらねば!」と奮起させてくれる。2つストーリが交差して、ぐいぐい最後まで引っ張ってくれる文庫オリジナル長編作品だ。