真山知幸ジャーナル

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なつかしの『「松本」の『遺書』」(松本人志/朝日文庫)

「松本」の「遺書」 (朝日文庫)「松本」の「遺書」 (朝日文庫)
(1997/07)
松本 人志

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毎日、古本屋に立ち寄って100円文庫をチェックしている。

今日は、こんななつかしの本を買った。

いわずと知れた、ダウンタウン松本のコラム。

1994年の単行本『遺書』と1995年の単行本『松本』を合本して、

この文庫が1997年に発刊されたのだが、

最初の『遺書』は、250万部も売れた。

麒麟・田村の『ホームレス中学生』も大ベストセラーだが、それよりも上回っている。

放送作家・高須とのラジオでも、この印税の振込みが多額すぎて、笑けてきたと

語っていたが、それほど現実感のない数字をたたき出した本なのだ。

なぜか近所の祖父の家では、週刊朝日を定期購読していたので、

僕はこの連載をリアルタイムで読んでいた。

しかし改めて読んで気づいたことがいくつかある。

まず、際立っているのが「構成力」。

一つのテーマを決めて、脱線はしない。

メッセージが明確で、それを巧みな比喩を用いて畳み掛けてくる感じ。

意外と2つ、3つくらいの要素を入れたくなるものだが、

捨てるところは捨てて、これでもかというほどわかりやすく書いている。

そしてもう一つが、書き手のキャラを確立させてること。

この場合は「横柄で自信満々のダウンタウン松本」を前面に出している。

そこに少しの揺るぎがないのが心地いい。

ドラマに出ない、CDを出さない、あたりにつっこむ今の読者もいるようだが、

状況も変わるし、人の活動方針なんて時代に応じて変化して当たり前だ。

ましてや芸人の書くものにそんなことはどうでもいい。

横柄な著者、松本は「自分の笑いをわからんやつはわからんでいい」

「アホはほっておく」と暴言を放ちながら、

しっかりとアホな読者にも伝わるように、

わかりやすいスタンスで、わかりやすい論旨を持って、

一見、過激に吼えまくる。

このことがすごい。

売れるべきして売れた本と言えるだろう。