真山知幸ジャーナル

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西村賢太の『苦役列車』はTHE私小説

苦役列車苦役列車
(2011/01/26)
西村 賢太

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西村賢太の『苦役列車』を読む。

これはなかなか強烈、痛快な作品だ。

日雇い労働者の悲哀を描いているというよりは、

自身のダメ人間ぶりをさらけ出した作品。

おおお、と読者をたじろがせるTHE私小説だ。

父親が性犯罪を犯したため、

家族ごとドロップアウトしていくという設定も強烈。

自身の血を呪うシーンはずしんとくるが、

そこを陰鬱に描いていないところが良いと思う。

なんで読んでいたら、こんなニュースが。

元ロックバンドギタリストがわいせつ行為

http://www.sanspo.com/shakai/news/110214/sha1102141550012-n1.htm

50歳間近にもなって、と言うべきか、

50歳間近だからこそ、言うべきか。

性犯罪者は同じ男して物悲しいものがある。

 

苦役列車』は、その息子という設定をフルに生かして、

芥川賞を見事に受賞。

過去に彼と働いたこともある人はさぞ驚いていることだろう。

インタビューで、西村は自身の境遇について、

こう言っている。

「教訓めいたことは嫌ですが、

何があっても悲観するばかりが能じゃなくて、

こういう形にもなるんだな、と

今回身にしみてわかりましたね。」

作家は、最後の職業、とはよく言ったもので。