ゲーテの「マイペース」はせわしない
大学時代、「俺はこれからマイペースに生きていくから」と、いきなり言い出した友人がいた。キャンパスに誰かに会うたびに、そう宣言する友人を見て、私は思ったのだ。
「すでにまったくマイペースではない……」
閑話休題。マイペースといえば、どこか「ゆっくりやらせてくれ」というニュアンスが強いが、「自分のペース」が必ずしも、ゆったりしたものとは限らないだろう。
ドイツの文豪、ゲーテはこう言った。
「わたしの本性の欲求が、わたしを多様な活動へと駆り立てるのです。 どのような寒村にあっても、不毛の孤島にあっても、わたしはやはり忙しく働いていることでしょう」
文豪でもあり、詩人でもあり、政治家でもあり、科学者でもあるゲーテは、実にせわしない男である。だが、それが自分のペースなのだろう。
環境に左右されることなく、意図せずとも貫いてしまう自己。それを「個性」と呼ぶのかもしれない。個性に合わせた、自分のペースでやろうではありませんか。