真山知幸ジャーナル

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『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(木暮太一・星海社新書)

立て続けのレビューだけど

(しかもまたもや星海社新書)、

旅行に出てしまう前に書いてしまおっと。

あの、酒飲んだときに、

どんな話するのか、ってのは

その人のパーソナリティと、

お互いの関係性だったりが出るところなんだけど、

なんだか今の不満ばっかり言われると、

聞いているだけで疲れたりもしがち。

でも、鉄鋼王カーネギー

「現状に不満を持つのはいいことだ」と言っているように、

現状を打破したいという気持ち自体は、むしろ良いこと。

問題は、その不満を突き詰めて考える気がないから、

結局、「まあ、そのうち時間や他の誰かが

何とかしてくれるかもしれない」というような

いつも変わらない、結論にたどり着いてしまうこと。

やっぱり、それじゃあつまらない。

不満はちゃんと突き詰めて考えて、

有効な対策を講じていきましょうや。

ということで、この新書は非常に面白かった。

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)
(2012/04/26)
木暮 太一

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自営でやっている人に比べて、

サラリーマンは驚くほどに自分の給与に無頓着だと

前から思っていた。

無頓着というのは、無関心ではない。

もっとほしい、これでは足りない、という思いは

よくあるだろう。

でも一方で、引かれている社会保険のことなども

よく知らなかったりする。新人じゃなくても。

それはさすがにわかっとりますわい、という人でも

自分の給料が、どういう会社の仕組みから出ているのか、

真剣に考える人はどれくらいいるだろう。

おそらくほとんどいないからこそ、

こんな不満が出てくるだろう。

「あいつは自分より、働きがよくないのに

給与が高いのは不公平だ」

「大手のあいつなんて、俺と同じような仕事なのに

年収が1000万もある。金あまりまくりだろ」

本書を読んでこれらの不満は、

「私は会社から給与が出る仕組みを理解していません」と

宣伝して歩くようなものだったんだなあ、と改めて。

給料はその人の働きに応じて支払われるわけではなく、

「必要経費分」が支払われるもの。

本書の序盤では、まずそのことが繰り返し書かれていて、

マルクスの『資本論』の視点から、企業の利益が

どこから生れるのか、わかりやすく説明してくれている。

そしてたとえ年収が1000万だろうが、

生活に余裕が生れるわけではない、としたうえで、

じゃあ、どうすればいいのだろう、という提言まである。

ちゃんと、具体的な解決のヒントが示されているのがいいね。

「こんな働き方はおかしい!」と言うだけでは、

「そら、そうやわな」としか言いようがないしね。

働き方の本はいろいろ出ているけど、

労働そのものへの根本的な問いに挑み

かつわかりやすい、というところが

本書の特徴だと思う。

ちなみに、マルクスの『資本論』については、

小難しい内容だと敬遠されがちだけど、

労働者は誰しもが知っておかなければならないこと。

その、とっかかりとしても、

この新書はよいんじゃないかなあ。