真山知幸ジャーナル

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大富豪の転落劇!ドキュメンタリー映画『クイーン・オブ・ベルサイユ 』

大富豪本を出したタイミングでのこの映画。

思わずレイトショーに足を運んでしまいました。

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クイーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』です。

この映画はもともとはですね、アメリカンドリームを手にした男の成功物語を撮る予定だったんですね。

それが、なんとリーマンショックによって、状況が一変。

映画の内容も、転落物語へと変貌を遂げたという、ちょっとすごいドキュメンタリーです。

億万長者の名は、デヴィッド・シーゲル。リゾートマンションの共同所有を持ちかけるビジネスで大成功を収めました。

そして、シーゲルにとって3人目の妻となるのが、30歳年下の美女ジャッキー。

元ミセス・フロリダで、8人の子供をもうけています。

映画の主人公は、どちらかというと、彼女のほうでしょうね。

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何人入るんだという家で家族が過ごし、客人を呼んではパーティをしたりと、冒頭からそのセレブぶりに圧倒されます。

そして、2500坪の土地に立つ大邸宅ですでに贅沢三昧にもかかわらず、もっと大きい家を建てる、という計画が立てられます。

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それはベルサイユ宮殿をモチーフにした大邸宅で、8361坪! 

ジャッキーは「アメリカで一番大きい家」の建築現場に通っては、理想の生活を語ります。

キッチンは10箇所で、トイレは30箇所というだけでもスゴいですが、施設がやたらと充実。

舞踏会場やスパはもちろん、ボーリング場、テニス場、野球場、スケート場まで建築が進みます。

大富豪破天荒伝説』では、第71位にランクインさせたインドの大富豪アンバニの邸宅にその規模こそ負けるものの、レジャー施設ぶりはなんだかそっくりです(ちなみに、アンバニの家には映画館があるのだ)。

シーゲルは自信満々に言います。

「金持ちの人間の気持ちを

 味わいたくないなら、

 もう死人だ」

子供に「部屋」ではなく「棟」を与える――。

そういう発想の夫婦二人が、リーマンショックで一気に転落してしまいます。

こっから、映画のトーンが変わってきます。

豪邸の建設はもちろんストップ。

あらゆるものを売りに出しながらも、ジャッキーはなんとか日々のコストを下げようと奮闘します。

でも安いスーパーにいったって、車に入りきれないほどめちゃくちゃに買い物してしまうし、遠方の地でレンタカーを借りたかと思えば、「運転手は?」と聞いてしまうような有様。

家のお手伝いさんが激減したため、部屋中は犬の糞だらけに…・・・・。

それでもジャッキーはなんとか家族がバラバラにならないように、明るく振舞うところが、魅力的。

ジャッキーは見てて、嫌味がない女性で、人に喜んでもらうために一生懸命なところに好感が持てました。

そこはむしろ、転落後のほうが際立っていたように思います。

シーゲルはというと、資金を調達のために駆けずり回って疲労困憊。

家でも周囲に不機嫌な様子を見せるように…・・・。

家族をつなげようとするジャッキーにも「それより電気を消して節約しろ」という態度をとってしまいます。

(確かに言ってることは正しい)。

もともと私生活と仕事の区別が全くないような仕事人間なので、その仕事がうまくいかなくなると、なんだか顔つきまで変わってしまい、そばにいる家族の大切さに気づけなくなるのだなあ、とも。

一方、子供たちは意外と冷静で、金が有り余っている頃の家庭の状況に「普通じゃない」と感じています。そして、一人の子が言ったこんな言葉が心に残りました。

「お金から自由なようで縛られている」

映画では、夫婦2人だけではなく、乳母や運転手など脇の人の人生にもクローズアップ。

お金がないために国にも帰れず、家族に会えていない話などを聞くに「お金で幸せは買えない」という単純な結論にも走らせてくれません。

追い詰められても、決して再起をあきらめないシーゲル。

以前の生活を懐かしく思いながらも、足元の家庭の幸せを大切にしようとするジャッキー。

映画が終わっても、2人の人生の続きを知りたくなるような映画でした。

富豪の人生の映画化といえば、新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの生涯をモデルにしたと言われている映画『市民ケーン』があります。

愛人のために動物園を作ったハーストについては、大富豪破天荒伝説でかなりページを割いて取り上げましたが、この『市民ケーン』が気に食わなかったハーストは、各所に圧力をかけまくったんですね。

それに比べて、本作はノンフィクションでカメラを回させることを許してしまうなんて、懐が深いなあ・・・・と思っていたけど、やっぱり揉めたんですね(笑)。そりゃそうか。

リーマンショック・訴訟……『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』監督が見た億万長者の素顔】

http://getnews.jp/archives/646385

2012年サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門監督賞受賞作。

ぜひ、拙著とともにお楽しみください。

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(2014/08/27)
真山 知幸

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