真山知幸ジャーナル

告知、執筆活動の記録のほか、書評、名言、偉人についてなど

「グラゼニ」(森高夕次・アダチケイジ/講談社)

グラゼニ (1)グラゼニ (1)
(2011/05/23)
森高 夕次、アダチ ケイジ 他

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野球やサッカー漫画はもう出尽くしちゃって、

新しい視点は難しいんでないかなあ、なんて思っていたが、

探せばあるものである。

野球選手の給料を切り口に、プロの厳しさを描いたのが本作。

いや、切り口というか、ほぼカネの話である(笑)。

主人公は凡田夏之介。

球団「スパイダーズ」の中継ぎ投手で、

高卒でプロ入りし8年目を迎える。

年棒は1800万円。

冒頭に書いてあるように、一見、

サラリーマンよりも稼いでいあるかに見える。

だが、凡田はそうではないと力説する。

「30越えたらあと何年できるか分からない商売なのです。

ちなみに引退してコーチや解説者になれる人は

ほんのひと握りです!

引退の翌年--年収100万円台になった人を

僕は何人も知っている!

だからプロ野球選手の絶頂期と言われる

この26歳ののときに年棒1800万ってのは

全然ダメなんです!」

うーむ、なるほど・・・。

思えば、サラリーマンでいえば、これから働き盛りという時期に

プロ野球選手は第二の人生を模索しなければならない。

もちろん、そこまでプロとして続けられればの話だが・・・。

契約を保留しては、

何千万ももらっているんだからいいじゃない、と呆れられ、

こじれれば「銭闘」などと言われるが、そう考えれば、

必死になるのも当然かもしれない。

これだけ最初から最後まで

カネの話を中心にしているのに、

決して殺伐とした内容ではない。

むしろ、チームメイトを思う気持だったり、

温かい感じがするのは、

夏之介の銭ゲバでは決してない、

愛すべきキャラクターの力が大きいだろう。

野球だけに限らず、

プロフェッショナルであることの厳しさと、

だからこそ感じられる面白さを教えてくれる1冊。